Veganがパーム油を避ける理由と問題解決にむけて求められること

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Veganは、たとえ植物由来原料だとしても、それが「可能で実用的な限り、動物からの搾取や、動物への残虐な行為を排除する」ライフスタイルに反する製品の消費を避けます。

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今日はそんな原材料のひとつ、パーム油について、その生産が及ぼす影響と問題解決に向けた視座をシェアしたいと思います。

とはいえ、パーム油の問題は奥深く、それだけで一冊の本がかけるほどの論点を孕んでいますので、本記事では主として野生動物との関係に絞って言及し簡潔に分かりやすくまとめます。

とら

多くの商品に使われるパーム油

パーム油

出典:農林水産省食料産業局/パーム油を巡る状況について

パーム油は最も多く使われている植物油です。

私たちの身近な商品であるパンや、ポテトチップスなどの加工食品にも多く利用され、石鹼の主成分や、食器・洗濯・掃除用の洗剤、シャンプーにも含まれます。

また、ファストフード店やコンビニの揚げ物用油としても多く利用されています。

パーム油の生産と森林破壊

油ヤシ

パーム油はアブラヤシの実を絞って採取する油です。

熱帯域を原産とするアブラヤシは、インドネシアやマレーシアなど、地球で最も生物多様性の豊かな熱帯雨林を伐採して大規模プランテーションを開発し栽培されます。

また近年では需要の高まりに伴い、その生産量も大幅に増加しています。

森林の、数千から数万ヘクタールの土地を開拓して農園に転換し単一栽培を行うため、森林減少やそれにともなう生物多様性の喪失は甚大で大きな問題となっています。

主要生産国であるインドネシアとマレーシアの森林減少の最も大きな要因は、アブラヤシ農園開発だと言われています。

森林破壊推移

出典:農林水産省食料産業局/パーム油を巡る状況について

商業伐採や日本の里山のように、森林を部分的に開拓した場合は、時間とともにある程度は再生しますが、アブラヤシ農園は森林を皆伐してつくられるため、そこにあった森林生態系はすべて失われ再生が困難となっているのです。

森林破壊による野生動物への影響

象の親子

パーム油の生産は、「生物多様性の宝庫」ともいわれる熱帯地域に集中しています。

絶滅危惧種を含む野生生物の生息地が壊滅的に奪われ、森林を住処とするオランウータンは生息地の80%が失われて、2025年までに50,000人以下になると考えられています。

インドネシアでは、オランウータンを保護・救出する取組みも行われていますが、保護したオランウータンを野生復帰させるための森林が破壊されているため、帰る場所のない動物達の救出活動は対症療法にしかならないというジレンマを抱えています。

また、住処を奪われたオランウータンや像たちが群れとなってアブラヤシ農園に入り込み、「害獣」と認識され、毒物を仕込んだ食べもので殺されるという悲劇も起こりました。

問題解決に向けて

オランウータン

日本のパーム油輸入総量は、平成28年時点で前年比4.4%増の64.7万tと増加傾向にあります。

食品や洗剤等の日用品以外に燃料などにも利用され需要拡大が促されているからです。

原材料としてパーム油が担う部分はきわめて多岐にわたっているため、パーム油を完全に排除することは困難だと思われます。

また、パーム油に替わる植物油を生産しようとすると、コストが上がったり、さらなる環境破壊がもたらされる可能性もあります。

とり

こうした中、パーム油を扱う国際的な大手食品会社が環境対策等につき批判を浴びたこともあり、パーム油への適切な対応が求められる動きが本格化しました。

主として、EUやイギリス主導の、パーム油の持続可能な調達を推進する認証方式に、森林伐採の禁止、生物多様性減少の阻止といった目標を掲げ、マレーシアやインドネシア政府が認証制度を立ち上げている他、NPOが森林保護を目的とした活動を行うなど様々な取組みがはじまっています。

しかし、現段階では、これらの認証制度に関しては、適格性をチェックする客観性を持った国際認証組織の評価システムは存在していません。

さる

日本においては、そもそもパーム油に対する社会的認知も進んでおらず、国内市場中心の食品メーカーにとっては、それらの経費を価格転嫁できる環境にはないともいえます。

世界のパーム油の生産量6千万tのうち、認証原油は約20%の13百万t弱でしかありません。

日本に輸入されるパーム油のうち食用として使われる大部分は非認証油として流通消費されています。

国際的な共通認識において、森林破壊が生物多様性を損ない、気候変動の最大の要因とされ、森林を含む自然生息地の損失抑制が求められる中、早急に認証制度を整備し課題の解決策を模索していくことが求められています。