酪農大手13社が排出する温室効果ガスは、鉱業・石油・ガス大手よりも多い

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”Institute for Agriculture and Trade Policy” (IATP)(「米国農業貿易政策研究所」)の新しい報告によると、大手酪農企業13社が排出する温室効果ガスは、世界第6位の経済大国である英国の総排出量と同じであることが明らかになりました。

Milking the Planet-How Big Dairy is heating up the planet and hollowing rural communitiesー」

(※参考:Emissions from 13 dairy firms match those of entire UK, says report

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世界の酪農大手企業13社を合わせると、2017年の温室効果ガス排出量は、オーストラリアに本拠地を置く鉱業・石油・ガス大手のBHPや、米国に本拠地を置く石油会社ConocoPhillips Companyよりも多くなっています。

化石燃料企業に対する世間の監視が強まっているのとは異なり、私たちの食品システムが全世界の排出量の最大37%に関与しているという科学的証拠が積み上がっているにもかかわらず、世界の食肉・乳製品企業に排出量の責任を問う世間の圧力はほとんど存在しません。

最大手の酪農企業の総排出量は、わずか2年間(2015年~2017年)で 11%増加しました。

Figure 1

出典:https://www.iatp.org/milking-planet

各国政府が世界の排出量を大幅に抑制するために 2015 年にパリ協定に署名したにもかかわらず、これらの企業による温室効果ガスの3,230万トンの増加は、1年間に運転された 690万台の乗用車(136億ℓのガソリン)による汚染に相当します。また一部の乳業会社では、2年間で排出量が30%も増加しています。

Fig 2

出典:https://www.iatp.org/milking-planet

これらの企業はいずれも、法律で気候排出量の公表や検証を義務付けられておらず、地球温暖化の気温上昇を1.5℃に抑えるための計画を提示することも求められていません。これらの企業のうち、排出量を公表している企業は半数以下です。

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EU、米国、ニュージーランドだけで、世界の乳製品生産のほぼ半分(46%)を占めています。

これらの国やその他の先進国に本社を置く企業は、世界の乳製品の排出量の大部分を占めており、これらの国の政府は、2030年と2050年の排出量削減目標に沿って、「Just Transition(公正な移行)」を実現するための政策を実施する重要な立場にあります。

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世界の主要な酪農生産地域では、市場の集中と生産量の増加に伴い倒産も増加しています。

EU

世界の輸出の4分の1以上を占めているEUも、1981年から2013年の間に5つの酪農場のうち4つが消滅しました。

EU が気候変動を真剣に考えるのであれば、共通農業政策(CAP)を劇的に改革して環境への耐性を高めなければなりません。

Figure 5

出典:https://www.iatp.org/milking-planet

米国

米国の乳製品全体の生産量は、大規模酪農場の新設や拡大により増加し続けています。これらの大規模酪農場は、外部の投資家が資金を提供し、多くのファームビルプログラムに支えられていることが多いです。

特に温室効果ガスの排出量については、環境面での強制力がないことが、大規模酪農をさらに助長しています。

ニュージーランド

国の排出量の半分は畜産農業によるもので、1990年以降、乳牛の数が2倍に増え、肥料の使用量が 600%増加したことで、農業部門の排出量は 12%増加しています。

ニュージーランドは牛乳の95%を輸出しており、主に世界第2位の乳製品加工業者であるFonterra Co-operative Group Limited(フォンテラ社)を経由しています。

※日本法人フォンテラジャパン株式会社もあります

フォンテラ社は昨年、巨額の損失を出し、フォンテラの企業構造と投資戦略に疑問の声が上がっています。

インド

インドの国営酪農協同組合”Amul”は、2015年から2017年の間に生産量が大幅に増加し、最大排出量増加を記録しました。

2013年から2015年の間に、インドは13万トンの粉ミルクを輸出していましたが、わずか3万トンになりました。

過去16年間で520万世帯以上が酪農をやめています。

牛への給餌はインドの酪農のコストの 60~70%を占めており、貧しい農家は市場から搾り取られています。

インド政府は2025年までに生乳処理能力を 2 倍にすることを計画していますが、これはインドの酪農部門を貧困層や社会的に疎外された人々を切り捨て、高度に資本化された 酪農の産業システムへと押し上げようとしているように見えます。

牛の親子

IATPの欧州ディレクターで報告書を執筆したシェファリ・シャルマ氏は次のように述べています。

政府が気候変動目標を引き上げ、大規模な乳製品企業の台頭と、企業の乳製品生産力、生産量、温室効果ガス排出量をさらに増加させる公的インセンティブの増加を阻止しなければなりません。

私たちの地球の未来は、酪農への対応にかかっています。

また、国連食糧農業機関(FAO)とグローバル・デイリー・プラットフォームによる2019年の共同報告書は、次のように述べています。

気温上昇を抑えるためには、酪農部門は温室効果ガスの排出量を削減し、低炭素の未来に向けて取り組まなければなりません…早急かつより野心的な行動をとる必要があることを示す明確な根拠があります。