動物好きを自認しながら、どうして動物を食べてしまうのでしょうか?
肉を食べる熱心な動物愛護者であれば何度も自問自答されていることだと思います。
この明らかな不一致は 「認知的不協和」として知られています。
特に意思決定に関連して、一貫性のない思考や態度を持つことを意味し、それが不快感をもたらし、さらには不合理な行動を起こさせる可能性があります。
私たち人間は、自分の世界が一貫していることを望んでいます。
効果的なアニマルライツ活動を行うためにも、動物製品消費の心理を理解しておくことは、動物製品の消費を減らすよう説得するための戦略を立案する上で非常に重要です。
肉のパラドックス
メラニー・ジョイ博士は、著書「Why We Love Dogs, Eat Pigs」の中で、「肉のパラドックス」と「カーニズム」について論じています。
豚を食べながら犬を撫でたり、牛ステーキにかぶりついたりできるのはカーニズムの影響です。このような信念体系は、文化と周囲の人たちの両方を通して刷り込まれています。
例としては、「本物の男は肉を食べる 」というスーパーの看板や、「植物の牛乳ではなく、本物の牛乳で作られた 」という広告などがあります。
動物への愛情を表明し、畜産が動物の苦痛につながることを認識しているにもかかわらず、動物を食べるという認知的不協和は、しばしば 「肉のパラドックス 」と呼ばれます。
認知的不協和の緩和
動物に愛情を示しながら肉を食べる人は、無意識にいくつかの方法でこの認知的不協和を緩和していると言います。
もっとも、認知不協和音から脱する最良の選択肢は、自分の行動を自分の価値観に合わせて、ビーガンのライフスタイルに移行することにほかなりません。
認知的不協和は、「家畜」とカテゴライズされた動物を、人間や他の動物よりも苦しみを経験する能力が低いという、(誤った)信念をもつことである程度は緩和されます。
しかし、それは、事実を無視したり、自分自身に対する信頼を失墜させることにつながるものです。

いくつかの研究
雑誌『Appetite』に掲載された2010年の研究では、研究者たちは参加者に牛肉とナッツのどちらかを食べさせたところ、牛肉を食べた参加者は、ナッツを食べたグループよりも、牛は苦しんでいないと信じていました。
➡The role of meat consumption in the denial of moral status and mind to meat animals
2011年の研究では、研究者は研究室に来る前に、参加者に肉か果物のどちらかを予想するように指示しました。肉を予想していた人は、果物を予想していた人よりも牛や子羊は頭が悪いと考えていたという結果が出ました。
➡Don’t Mind Meat? The Denial of Mind to Animals Used for Human Consumption
Personality and Social Psychology Reviewに発表された2016年の研究では、動物への偏見を減らす試みは、さまざまな成功例があることが示されています。
人間は、自分のアイデンティティが脅かされているときに不快感を感じ、それだけではなく否定的な態度を強化することさえあります。
1959年、研究者たちは学生に退屈な下働きの仕事に1時間参加させました。研究者たちは学生に1ドルあるいは20ドルを支払って、その課題が実際に楽しいものであることを伝えていました。20ドルを支払った学生は、1ドルを支払った学生に比べ課題はあまり楽しくないと言いました。
この研究を行った、フェスティンガー氏とカールスミス氏は言います。
これは、十分な報酬が得られなかったからだと推測します。つまり、1ドルという十分ではない報酬で課題を行った穴埋めに、実際には退屈な仕事を楽しい課題だったと思うことで自分を納得させるしかなかったのです。
➡COGNITIVE CONSEQUENCES OF FORCED COMPLIANCE Leon Festinger & James M. Carlsmith
この後付けの理由付けは肉の消費にも言えます。
人は自分がずっと悪いことをしているとは認めたくないため、「肉は自然で、食べるのが普通で、必要なものである」(肉を食べるための最も一般的な理由)、「畜産動物は幸せに扱われている 」などの理由を捻りだして、それでいいと自分を納得させます。
認知的不協和を打破する方法
残念なことに、認知的不協和を克服する方法についての文献は、一般的には、他の人を助けるためにも自分自身を助けるためにも多くないようです。
興味深いのは、外向性のような個人のパーソナリティのいくつかの側面が、認知的不協和からの不快感と、誰かが自分の考えを変える可能性の両方を減らすことです。
ある研究では、肉が加工されていたり、元の動物の姿からかけ離れていることが、動物の苦痛に対する共感を減らしていることがわかっています。
食品や畜産農業のプロセスを説明するのに使われる言葉もまた、共感や嫌悪感の度合いに影響を与えます。
例えば、「殺す、屠殺する」の代わりに「収穫する」という言葉を使うと、苦痛への共感度が下がります。
認知的不協和を理解すると、他の人の行動をより理解できるようになり、肉食の心理、アウトリーチのターゲティングなど、行動の変化を促すための最も効果的な方法を模索するのに役立ちます。