ー魚は痛みを感じないという考えは明らかに時代遅れー生物学の証跡

さかなEnvironment

沿岸生態系の科学と社会をテーマにしたオンラインマガジン「Hakai Magazine」に掲載された報告によると、魚は痛みを感じると結論づけられています。

Fish Feel Pain. Now What?

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マッコーリー大学(シドニー)の海洋生物学者Culum Brown氏は、幼い頃祖母と一緒によく遊びに行った、オーストラリアのメルボルン公園の池で金魚やドジョウなどを見るのが好きでした。

ある日、いつものように祖母と公園に行くと、池の水が抜かれ、魚たちは池の底の泥の上で太陽にさらされ、息苦しそうにしながら飛び跳ねていました。

Brown氏は公園のゴミ箱を探し回って容器を集め、そこに水を満たして、窒息しかけていた数匹の魚を入れて救い、あるいは、池の中の水が残っているところに魚たちを移しました。

「私は無我夢中で走り回って、魚たちを救おうと必死でした」と、回想します。

最終的に、彼は何百匹もの魚を救い、そのうち約60匹を保護し家族に迎えました。中には、その後10年以上もBrown氏の自宅の水槽で暮らした魚もいます。

従来の常識

魚

従来の常識では、魚は痛みを感じないとされてきました。

2014年に放送された英国BBC Newsnightは、ペンシルバニア州立大学の生物学者Victoria Braithwaite氏(1967 –2019)を招き、スコットランド漁師連盟のトップであるBertie Armstrong氏と、魚の苦痛と福祉について議論しました。

Do fish feel pain?

Armstrong氏は、魚が動物福祉の保護に値するという考えを否定し、「科学的証拠は、魚が私たちと同じようには痛みを感じないことを示している」と主張しました。

それはまったく真実ではない、とBraithwaite氏は言います。

他の生物の主観的な苦痛が、私たち人間が感じている苦痛と同じかどうかを決定的に知ることは不可能です。しかし、それは問題になりません。

猫や犬などコンパニオンアニマルとして利用される動物、実験に使われる動物、家畜として飼育される動物などが、人間と同じ構造で苦痛を感じているかどうか、内面を正確に知ることはできませんが、それでも私たちは彼らに人道的な扱いと法的保護を与えています。

過去15年間、Braithwaite氏をはじめとする世界中の魚類生物学者たちは、哺乳類や鳥類と同じように、魚も痛みを感じているという実質的な証拠を示してきました。

この事実を受け入れようとする人は増えています。魚も確かに痛みを感じており、それは人間が感じるものとは違うかもしれませんが、痛みの一種であることに変わりはありません。

魚は痛みを感じることを実証する研究の一部

金魚

Braithwaite氏によると、解剖学的レベルでは、魚には侵害受容器と呼ばれるニューロンがあり、高温、高圧、腐食性化学物質などの潜在的な害を感知し、哺乳類と同じオピオイド(体が生まれつきもつ鎮痛剤)を生産しているとされます。

金魚やニジマスの実験では、エラのすぐ後ろにピンを刺されるとニューロンが刺激され、反射や衝動を司る後脳や脳幹だけでなく、意識的な感覚に不可欠な脳領域(小脳、構造体、脳脊髄など)の電気活動が急増します。

リバプール大学の生物学者であり、魚の痛みに関する世界的な専門家の一人Lynne Sneddon氏は、魚に、何もない水槽と、砂利や水草で装飾されたふたつの水槽のどちらにも自由に行けるようにして好きなほうを選択させました。

すると、彼らは一貫して、砂利や水草のある水槽を好んでそこで過ごします。

しかし、そこに刺激物が注入されると、彼らはそのお気に入りの水槽を放棄して、殺風景な水槽に移動しました。

また、魚に鎮痛剤を与えた状態では、砂利と水草のある水槽に留まりました。

Fish experience pain with ‘striking similarity’ to mammals

現在では魚の痛みは広く認められている

鮭

現在では、生物学者や獣医師が魚の痛みを現実のものとして受け入れるようになってきています。

Sneddon氏が、科学者と一般市民に向けて講演を行った経験を振り返ってこう言います。

2003年に講演をしたとき、私は「魚が痛みを感じることができると信じていますか?」と問いかけると、手を上げるのは1人か2人だけでした。しかし、今、同じ質問をするとほとんどの人が手を上げます。

2013年、米国獣医師会は「動物の安楽死のための新しいガイドライン」を発表しましたが、その中には次のような記述があります。

痛みに対する魚の反応が単に単純な反射を表しているという主張は否定されている…蓄積された証拠の優位性を考慮すると、痛みからの救済に関して、魚は陸生脊椎動物と同じ配慮を与えられるべきであるという立場を支持する。

AVMA guidelines for the euthanasia of animals

魚は痛みを感じる大脳の複雑な構造を持っていないという考えは明らかに時代遅れです。

科学者たちは、ほとんどの脊椎動物(一部の無脊椎動物)と同様に魚には苦痛の意識があり、人間のように大きな大脳をもっているか否かは問題にならないと言います。

地球上には、ケシの実のように小さく、スイカのように大きく、緻密で海綿状、球状で細長い、多数の脳が存在しています。

人間と同じである必要はありません。

各国の魚に対する法的保護

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魚は苦痛を感じるという科学的証拠があるにもかかわらず、世界の多くの国では、畜産動物や実験動物、ペットを対象とするような法的保護は、一般的には与えられていません。

イギリスには、最も進歩的な動物福祉法のいくつかがあり、すべての非ヒト脊椎動物を対象としています。

カナダやオーストラリアでは、動物愛護法は断片的で、州によって異なり、魚を保護するものもあれば、保護しないものもあります。

日本の関連法では、魚類はほとんど無視されています。

米国では動物福祉法が、畜産動物や実験動物、ペットとして販売されているほとんどの動物を保護していますが、魚、両生類、爬虫類は除外されています。

食用として殺され、ペットショップで販売されるために飼育される魚の数は、哺乳類、鳥類、爬虫類の数をはるかに上回っています。

毎年、世界中で約700億匹の陸生動物が食用として殺されています。この数には、鶏やその他の家禽類、あらゆる種類の家畜が含まれていますが、養殖魚は年間100~1,000億匹、野生の魚は約1~3兆匹が殺されていると推定されます。

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魚を保護対象から排除する理由はない

魚

Culum Brown氏は言います

私はいつも動物と自然に共感し、そこから魚を排除する理由はありませんでした。

池の水を抜いたメルボルンの公園では、そこに魚がいて水が必要なのではないかという配慮は全くなく、魚を一時的に保護したり、別の場所に移動させたりしようとする試みは一切ありませんでした。私は子供ながらそのことにショックを受けました。

そして今でも、魚の苦痛を無慈悲に無視する人々を見かけることがあります。

魚が痛みを感じることを示す証拠が数多く発見されているにもかかわらず、世間一般の認識は少しも変化していないと感じます。

「活きづくり」という伝統料理

Brown氏はさらに言います。

生きた魚の生肉を食べる「いきづくり」という伝統料理を最近知りました。

オンラインビデオに映し出されているのは、シェフが魚の顔を布で覆い、魚を押さえながら、粗いチーズおろし器のようなもので魚の鱗を削っている場面。

続いて彼は大きなナイフで魚を縦にスライスし始めましたが、魚は彼に掴まれた手から逃れようと激しく跳ね上がり、近くのシンクに宙返りしました。

シェフは魚を取り戻し、両脇腹を切り落とし続けます。ザクロジュースのような濃い血がこぼれていました。

大根と大葉を敷いた皿に、そぎ落とされた自分の肉とともに盛られた魚の口とエラはまだパタパタ動いていて、時折、肉を切り取られた全身を震わせていました。