ー肉食社会は人獣共通感染症リスクを増大させているー専門家らの警告

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一部の専門家は、新型コロナウイルスが、以前のSARSのようにウエットマーケットで動物から人間に飛び感染したのではないかと仮説を立てています。

そして、多くの人々が、ウエットマーケットが今も開かれていることに反対しています。

これらの国を非難するのは簡単ですが、しかし、世界中の人々の食のあり方もパンデミックの主要な危険因子のひとつであるという重要な事実を無視することはできません。

人間は、大量の肉を食べており、その大部分は畜産農場で生産されたものです。そこでは、動物達は過密で過酷で不衛生な条件の下で生かされています。

今回は、こちらの記事を参考に、畜産農業と感染症の関係について考えてみたいと思います。

The meat we eat is a pandemic risk, too

牛

畜産と感染症

アメリカの医師で公衆衛生問題の専門家、『Bird Flu』(鳥インフルエンザ)の著者でもあるマイケル・グレガー氏は言います。

何千何万もの動物たちが、狭い小屋の中で、くちばしとくちばしの間や鼻と鼻の間のわずかなスペースに横たわりながら、ストレスで免疫システムが麻痺し、腐敗した老廃物から出るアンモニアで肺が焼かれ、新鮮な空気や日光が不足した環境におかれています。

これは、病気の発生と蔓延の完璧な温床です。

さらに悪いことに、飼育されている動物の特定の遺伝子(より効率的にその肉を得るため鶏の胸を大きくするなど)を選択することで、これらの動物はほとんど遺伝的に同じになっています。

つまり、ウイルスは、その追跡を止める可能性のある遺伝子変異に遭遇することなく、動物から動物へと容易に拡散することができるということです。

グレガー氏は言います。

本当に世界的なパンデミックを起こしたいのであれば、大規模な畜産農場を作ればいい。

豚

WHOや疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)などの専門機関は長年にわたり、新興の感染症の多くは動物に由来するものであり、工業化された畜産がそのリスクを増大させていると警告してきました。

私たちは過去の経験から、人間が支配する家畜動物が深刻な人獣共通感染症を引き起こす可能性があることを知っています。

2009年、北米の養豚場で豚インフルエンザ(H1N1)が流行し、その後ヒトに感染しました。

この新型インフルエンザは瞬く間に世界的な大流行となり、何十万人もの人々が死亡しました。

科学者たちは、新型コロナウイルスは畜産農場ではなく野生のコウモリから発生したと考えています。

しかしパンデミックが私たちの生活に与える影響を目の当たりにした今、問題なのは、私たちは、次のパンデミックの可能性を大幅に減少させるためにも食生活を変えなければならないということです。

畜産における2つの異なるタイプのアウトブレイク

鶏

パンデミックのリスクには、1918年のインフルエンザやCovid-19などウイルス性のものと、中世のヨーロッパを襲った「黒死病」と呼ばれるペストなど細菌性の2つの異なるタイプのアウトブレイクがあります。

畜産農業はこれら両方のカテゴリーで高いリスクがあります。

『 Pandemic』の著者であるソニア・シャー氏は、ウイルスと細菌の両方について懸念しています。

猛烈な鳥インフルエンザと薬剤耐性の高い細菌病原体、これらは時限爆弾です。

ウイルス感染症

ウイルス

鳥インフルエンザはウイルスによって引き起こされますが、養鶏場で飼育されている鶏は(豚インフルエンザと同様に)高い危険にさらされています。

何千何万羽もの鶏が密集していることと、遺伝的にほぼ同じ鶏が飼育されていることは、非常に毒性の強いウイルスが出現し、急速に拡散し、死をもたらす原因です。

ミネソタ州セントポールにある農業生態学・農村経済研究隊の進化生物学者ロブ・ウォレス氏は言います。

大規模な畜産農場は、最も危険な病原体を探す最適な場所です。

もしあなたが宿主の中の病原体であるならば、次の宿主に感染する前に今の宿主を殺すことはできません。そうでなければ、自分の感染手段を切断してしまうことになります。

複製が早ければ早いほど次の宿主が見つかる前に、今の宿主を殺してしまう可能性が高くなります。

荒野の奥地では、あなた(病原体)は頻繁に宿主に出くわすことはないので、宿主が尽きないように病原性や宿主に与えるダメージを低く抑えなければなりません。

しかし、15,000羽の七面鳥や25万羽の鶏がいる納屋に入れば、次から次に飛び移ることができるため、強力なダメージで焼き尽くすことができます。

これは、畜産農業が自然界よりも、人獣共通感染症発生のリスクが大きい理由の一部です。

鶏

生物学者は、私たちが国境を越えて家禽や家畜を取引することが増えているため、危険性がさらに高まっていると付け加えます。

以前は世界の反対側で互いに分離されていた病原菌が再結合する可能性があります。

ウォレス氏は言います。

インフルエンザはゲノムが細分化されているので、トランプのようにゲノムの一部を交換します。

通常、ほとんどのカードはそれほど危険なものではありませんが、一部のカードははるかに危険な状態で出てきます。

遺伝子組換の増加は、病原体が爆発的に増加することを意味します。

工業畜産

世界ではすでに恐ろしい例が出てきています。

グレイガー氏は言います。

1997年にH5N1鳥インフルエンザウイルスが出現したことで、パンデミックがどれほどひどいものになる可能性があるかという私たちの理解は一変しました。

突然、感染した人の半数以上が死亡するインフルエンザウイルスが出現したのです。

人が H5N1 に感染した場合の致死率推定は60%でした。

Covid-19の死亡率は、専門家の間で1~3%と推定されていますが、これらの推定値は変化し続けており、国や年齢によって大きく異なります。(なぜH5N1がCovid-19ほど大騒ぎにならなかったのか不思議に思われるかもしれませんが、それはH5N1が人に感染せずほとんどが鶏の間で感染したからです。)

心配しなければならないのは鶏だけではありません。豚もまたウイルスの保菌者にされています。

2009年に豚インフルエンザが発生する10年前、マレーシアの養豚場でニパーウイルスが発生しました。何百人もの人に脳炎を引き起こし、重篤な神経疾患で入院した患者の約40%が死亡しています。

薬剤耐性を持つ細菌病原体

細菌

大規模畜産に関連するもう一つのパンデミックリスクは「高度な薬剤耐性を持つ細菌病原体」、つまり抗生物質耐性に関係するものです。

新しい抗生物質が導入されると、しばらくの間、それは素晴らしい救命の効果をもたらすことさえあります。

しかし、人間、農作物、動物の治療に抗生物質を使い始めると、細菌は進化し、抗生物質から生き延びるための突然変異を持ったものが優勢になり、徐々に抗生物質が効かなくなり、治療できない病気が出てきます。

CDC(米国疾病予防管理センター)は、昨年、ポスト抗生物質の時代がすでにここにあることを主要な報告書で警告しました。

私たちは、抗生物質が役に立たなくなり、薬剤耐性の菌が、あまりにも簡単に私たちの健康を壊滅させることができる時代に生きています。

米国では、15分に1人の割合で、抗生物質が効果的に治療できなくなった感染症のために命を落としているといわれています。

それでもなお、人間は畜産動物にあまりにも多くの抗生物質を与え続け、抵抗性を助長しています。

ジョン・ホプキンス大学環境保健学名誉教授のロバート・ローレンス氏は言います。

動物を窮屈で過密した不衛生な環境に置き、病気予防のために低用量の抗生物質を使用すると、細菌のDNAに自然発生的な突然変異が起こるための、完璧なインキュベーターをセットアップする、という事実を証明する証拠が多くあります。

自然発生的な突然変異が増えれば増えるほど、その突然変異の一つが、環境中に存在する抗生物質に対して耐性を持つ確率が高くなります。

これらの耐性菌は、世界中に広がる菌株になる可能性があり、それが大規模畜産農業の最大の健康リスクです。

BBC

出典:https://www.bbc.co.uk/programmes/m000bqsh

大規模畜産は、二重の細菌リスクを私たちに提示します。

鶏の間で発生した細菌が人間に感染すれば、それは深刻な感染症の蔓延を引き起こします。

抗生物質を使用し鶏の間の感染症を抑えようとしても、すでに投与している大量の抗生物質によって、細菌は抵抗力を備え、薬が効かない可能性があります。

そして、その細菌が人と人との間で広まり始めれば、治療不可能な細菌の大流行に陥る可能性があります。

畜産農業を放棄すればより良い食料生産システムの構築が可能になる

サンクチュアリ

大規模畜産がもたらすパンデミックリスクと、ウエットマーケットがもたらすパンデミックリスクの比較について、ローレンス氏は言います、

大規模畜産では、ウイルス性のパンデミックを発生する機会は少ないかもしれませんが、抗生物質耐性の細菌感染症が発生し蔓延する機会は大きい。

コロナウイルス収束後のより良いフードシステムを構築するにはどうすれば良いのでしょうか。

人獣共通感染症の脅威を減らすことはできないのでしょうか。

そして、その過程で、気候変動や動物への残酷さなど、畜産が抱える他の問題も軽減できるのではないでしょうか。

畜産農業を放棄する気があれば、人間の健康、気候、動物の福祉のためにより良い食料生産システムを持つことは間違いなく可能です。

大規模畜産農業は全ての種にとって壊滅的なリスクであり、長期的にみれば、私たちの行動を恒久的に変える必要があります。