すべての植物性ミルクや植物性チーズの温室効果ガス排出量は、牛のミルクやチーズに比べてかなり低いと推測できます。
米国やEUに後れをとっている日本でも、ダノンジャパンがベルギー発の植物性ミルクブランド「ALPRO」を日本市場で展開するなど、今や植物性ミルクの市場は世界全体で180億ドル相当に上ります。
乳糖不耐症やアレルギーの人、ビーガンのための商品とされてきたものが、今では一般的な主流になりつつあり、ビーガンではない人も植物性ミルクを選択する光景を目の当たりにしています。
そのような中で、植物性ミルクの生産に関し、他の生物や環境への悪影響を唱える論調も見られます。
しかし、“Ethical Consumer Magazine”のTim Hunt氏は次のように言います。
一つだけはっきりさせておきましょう。
どのような植物性ミルクでも、乳製品に比べて環境への影響が少なく、持続可能性が高いのです。
つまり、どの植物性ミルクを選んでも、牛乳より水や土地の使用量が少なく、汚染物質の発生が少なく、二酸化炭素排出量が少ないという選択をしていることになります。
植物性ミルクと牛乳のCO2排出量比較
温室効果ガス排出量の計算は、方法論によることもあれば、最善を尽くしている生産者と何も対策を施していない生産者の差が大きいこともあり、常に大きなばらつきがあります。
例えば、1 リットルの乳製品の排出量に関する研究では、0.54~7.50 kgCO2eq の範囲で結果が得られています。
➡Systematic review of greenhouse gas emissions for different fresh food categories
しかし、数値のばらつきはあるものの、多くの研究を見ると、ある種の基本的なパターンが浮かび上がり全体像がよく見えてきます。
この棒グラフは、オックスフォード大学のJoseph Poore氏が中心となって行った大規模な調査で、様々なミルク1リットルあたりの平均CO2排出量を示したものです。
➡Plant vs dairy – comparing their climate impacts
基本的には牛乳が植物性ミルクと比べ、多くのCO2を排出しているというパターンは一貫しており、牛のメタン排出量を考えれば、この結果は当然であり、驚くことではありません。
さらに、ほとんどの数値には、土地利用による温室効果ガスの「機会費用」が含まれていません。これを含めると、動物性食品のCO2排出量ははるかに高くなります。
グラフの「使用された土地」の数字はそれを示しています。牛乳は植物性ミルクより1リットル当たりの土地使用量も多いのです。
植物性ミルクの原料となる植物
植物性ミルクの原料となる植物は、大きく分けて3種類あります。
ナッツと種子
アーモンド、ココナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツ、タイガーナッツ、クルミ、ゴマなど。
穀類
米、オート麦、キビ、大麦、ソバ、スペルト、キヌア、ヘンプを含む
豆類
大豆、エンドウ豆、ひよこ豆を含む。
環境に配慮した植物性ミルクの選択基準
大豆
大豆は南米の森林破壊と関連しており、しばしばネガティブな報道が見られますが、世界で生産される大豆のほとんどが動物の飼料として使用されています。人間が直接消費するのは6%に過ぎないということを念頭におくべきです。
大豆生産における森林破壊の問題に取り組むためには、食肉産業と乳製品産業に目を向け変革を迫る必要があります。
豆乳を選ぶ際には、森林破壊につながる可能性のある地域の大豆を使用しないブランドを選択することで、このような環境破壊に加担することを避けられます。
日本で販売されているブランドは、国産のものも入手しやすく、製造・流通拠点に近いところで供給が行われることで、輸送による二酸化炭素排出量も減らすことができます。
アーモンド
日本でよくみかけるアーモンドミルクも、しばしば環境に対するネガティブな報道を受けています。
世界のアーモンドの80%はカリフォルニア州で栽培されており、干ばつや毎年のように発生する山火事に悩まされていることは確かです。
しかし、実際には、カリフォルニア州は家畜の飼料となる作物栽培に多くの水を使用しています。
アーモンドの生産に使われる農薬や、ミツバチの個体数への脅威を避けるためには有機ブランドを選択することができます。
ココナッツ
近年、人気のあるココナッツミルクのほとんどは、インドネシア、フィリピン、インドの小規模農家が独自に栽培していますが、市場価格は不安定なうえに低価格で取引されています。
ココナッツの木は成長に時間がかかるため、投資した後に市場が衰退した場合でも、より収益性の高い作物に移行することが困難です。
一度農家がココナッツ栽培を始めれば、彼らはココナッツからお金を稼ぎ続ける必要があります。
このことは、小規模農家が、搾取や不公正な価格にさらされる原因となっています。
消費者がこの問題の解決に貢献する方法は、フェアトレードのブランドを選ぶという選択肢があります。
米
ライスミルクは植物性ミルクの中で最も環境への影響が大きいといわれますが、これは炭素よりもむしろメタンに関連しています。
浸水した水田ではメタンが発生しますが、これも酪農の影響に比べればはるかに少ないものです。
Joseph Poore氏は、環境に最適な植物性ミルクはどれかという質問に対し以下のように答えます。
どの植物性ミルク、ビーガンチーズを選んだとしても、環境への悪影響は、乳製品に比べて非常に小さいので、その選択はとても有益なことだと思います。