映画「BLACKFISH」水族館に監禁されるシャチの悲哀

シャチEnvironment

2013年に公開された映画「ブラックフィッシュ」(ネイティブ・アメリカンの言葉で「シャチ」の意味)は、海洋哺乳類をエンターテイメント産業の一環として利用する産業の意義を問いかけ議論を巻き起こしました。(日本未公開)

映画は、2010年に、雄のシャチ「ティリクム」がトレーナーをショーの最中に襲い、トレーナーが死に至った事件を扱ったドキュメンタリーです。

公式サイト



この事件を中心に据えつつ、ティリクムが“SeaWorld”(米国に三か所ある水族館)に来た由縁や、今まで“SeaWorld”で起きたシャチの事故と、それに対する“SeaWorld”側の対応などを、元シャチトレーナーのインタビューや、パフォーマンスや事故の映像、音声などに基づいて構成し、最終的には“SeaWorld”側にシャチショーの停止と自然への回帰を促しています。

この映画の上映をきっかけに、“SeaWorld”には非難が集まり、世論は、水族館における海洋哺乳類の飼育に否定的になりチケットの売り上げは激減しました。

シャチのシャム

シャチ

シャムは、“SeaWorld”が捕獲した4匹目のシャチです。

彼女は1960年代にサンディエゴの“SeaWorld”に監禁され、観客のために芸を披露させられていました。

6年間の監禁の後、シャムは亡くなりました。

6年の間に、シャムは何人かの人を傷つけました。

そのうちの一人が、“SeaWorld”のトレーナーであるアン・エキスであり、シャムは、ショーがライブ録音されている最中に噛みついたのです。

シャムはこの事件の前に、異常行動の兆候を見せていたと報告されています。

事件をおこしたシャムの死後も、その名前は引きつがれ、“SeaWorld”でショーを行う全てのシャチは「シャム」と名付けられました。

シャムが教えてくれたこと

シャムは、“SeaWorld”のアニマルライツの歴史を象徴しています。

“SeaWorld”は、これまでにも数え切れないほどの動物への残酷な行為で非難されてきました。

俳優、モデル、活動家として活躍するパメラ・アンダーソンは、キャンペーンビデオの中で、

私たちは長い間、“SeaWorld”と闘ってきました。野生動物が閉鎖された環境で幸せに暮らしているとは思えません

と述べています。

野生のシャチが一日に移動する距離を水族館のプールで泳ぐには、プールを4,000周しなければなりません。

このような環境で生活させられるストレスは、シャチの心身にさまざまな健康問題を引き起こします。

歯を食いしばったり、ぐったりと浮いたり、背びれが折れたりしますが、これは野生ではめったに見られない傷です。

動物福祉研究所の海洋哺乳類科学者ナオミ・ローズによると、シャチが飼育下で苦しむ理由は 「基本的な生物学 」にあるそうです。

彼女はナショナルジオグラフィックに

食べ物や仲間を探すために長距離を移動するように進化してきた、ホッキョクグマもゾウもシャチも、そのような動きに適応した体になっているのです。

シャチを、長さ150フィート(約45m)、幅90フィート(約28m)、奥行き30フィート(約9m)の箱に入れて、カウチポテト状態にしてしまうのです。人間が作ったコンクリートの箱の中の生活に適応した海洋哺乳類は一匹もいません。

と述べました。

Orcas don’t do well in captivity. Here’s why.

その後のシャムに何が起こったのか?

シャチ

初代シャムと同様に、“SeaWorld”のシャチの多くは、飼育下の生活で、苦痛や異常行動を示してきました。

映画「ブラックフィッシュ」の主人公であるティリクムは、3人の人間を死に至らしめましたが、そのうち2人は彼のトレーナーでした。

2010年には、“SeaWorld”オーランドで開催された「シャムと一緒に食事」ショーの最中に、シニア・アニマルトレーナーであるドーン・ブランソー氏を水槽の底に引きずり込み、溺死させてしまいました。

ティリクムは2017年、36歳前後で細菌感染症により死亡しましたが、野生のシャチは70歳まで生きることができます。

“SeaWorld”はもはやシャチの繁殖は行っていませんが、複数のシャチ、イルカ、ペンギン、アシカ、セイウチ、サメ、シロイルカが飼育されています。

映画の公開をきっかけに、この動物たちを海洋保護区に移動させようという声が上がっています。

シャムが伝えたこと

シャチ

シャムと彼女の後を追った人々の物語は、娯楽のために水族館のプールに監禁されている海洋動物に対する世間の見方を変え、特にティリカムは、“SeaWorld”の残酷さに人々の目を覚ますきっかけとなりました。

「ブラックフィッシュ 」の共同ライター、ティム・ジマーマンは、ナショナルジオグラフィックに、

彼の人生は、私たちの、“SeaWorld”をはじめとする海洋生物パーク産業の見方を変えました。彼らは、知的で自由に行動する動物を監禁して展示することに対する我々の道徳的な考え方を変えたのです

と述べました。

近年、ブリティッシュ・エアウェイズ、ユナイテッド航空、バージン・ホリデーズ、ウェストジェット、エア・カナダなど、多くの旅行会社や航空会社が、動物福祉を理由に“SeaWorld”との関係を断ち切っています。

旅行大手のトーマス・クックもまた倫理的な理由で“SeaWorld”との連携を取り下げました。

イギリスの新聞「ミラー」の旅行編集者ナイジェル・トンプソンは、

この動きは 大胆かつ勇敢 です。英国の一般市民の海洋哺乳類のパフォーマンスを見たいという欲は萎えています。それは、あまり動物福祉が啓発されていない時代のものです。

と述べました。

水族館“SeaWorld”のその後

シーワールド

出典:https://seaworld.com/san-diego/

その後、“SeaWorld”は、ターゲットを、動物ではなく、乗り物、フェスティバル、テーマ別の体験アトラクションに移行しようとしています。

オーランド・ウィークリーによると、“SeaWorld”全体では、新しい動物のアトラクションは1つも計画されていないといいます。

“SeaWorld”オーランドで2013年にオープンした動物アトラクション、「南極大陸」と、「Empire of the Penguin」が最後です。オーランドではアニマルレスキュー活動も行われていいます。

代わりに、すべての“SeaWorld”パークは乗り物アトラクション施設に変わります。

三か所の“SeaWorld”パークでで開催されている、深海の生き物をテーマにした「エレクトリック・オーシャン・サマー・フェスティバル」は、海洋公園に多くの人を連れてきました。

“SeaWorld”が運営するベンチャー企業は、生きている動物を扱わないことも発表しました。

サンディエゴの近くのチュラビスタに新しい「セサミストリート」のテーマパークをオープンし、ジェットコースターやカルーセルなどの家族向けの乗り物のほか、パレードやキャラクターとの交流などにも力を入れています。